令和6年に入って初めての観劇は大好きな井上芳雄くんのベートーベンです。
主演は井上芳雄。相手役は花總まりさん。作・演出は「エリザベート」や「モーツァルト!」などを手掛けたミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)のゴールデンコンビです。
この構成でテンションが上がりまくりです。高まる期待を胸に行ってきました。
チケット予約は博多座会
10月頃、博多座会から「特別号」が送付されてきました。この「ベートーベン」の告知です。
「なんで福岡サンパレスホール?」「なんで4日間しかないの?」という私の残念な気持ちはさておき、博多座での公演と同じように博多座会員は優先予約ができるとのことでした。
送られてきたチケットを見ると、18列目のサブセンターの席でした。まあ、可もなく、不可もなくといったところでしょうか。
でもね、実際に現地を訪れてみると、想像以上に舞台は遠かったのです。ここから、私のテンションが徐々に下がっていきます。
福岡サンパレスホールの残念なところ
舞台を宣伝する掲示がない
普段の博多座公演なら、電光掲示板にでかでかと公演のポスターが映し出されます。その画像と一緒に記念撮影なんかして、観劇を楽しむイントロダクションの役割を果たしてくれます。また、エントランスに向かう階段にも装飾がされていて、観劇気分を盛り上げてくれています。(まあ、最近観客動員が少ない公演はこの装飾はなくなりましたけどね)
今回の福岡サンパレスホールは何もなし。入場ゲートに到着して、やっとポスターが貼られているくだいで、ちっとも気分が盛り上がりません。
このキャストと演目、公演期間の短さなら、チケットは前売りで完売だし、特別大きな宣伝をしなくてもよかったのでしょうけど。。。
舞台が遠い
この舞台の会場は福岡サンパレスホテル&ホール。客席は2,316席で主にコンサート等が開催されています。
私にとってのホームグラウンドである博多座は座席数が1,454席ですから、単純に約1.5倍になります。でもね、舞台幅は博多座のそれより狭いようですし、そのうえで客席が1.5倍となると、本当に舞台が遠く感じます。
役者の表情や動きを楽しむ観劇には、福岡サンパレスホールは不向きなようです。
喫食スペースがない
博多座に行くと、いつもホールにはおいしそうなお弁当が並んでいますし、幕間で食事ができるレストランもあります。博多座では、開演前や幕間の時間も楽しむためにの準備がされています。私はお弁当を買って、幕間にゆっくりいただくのが観劇ルーティーンです。こんな人、他にも数多くいらっしゃるのではないでしょうか?
ところが、福岡サンパレスホールには、お弁当どころか、喫食スペースもほとんどありません。客席での飲食は禁止ですから、売店で売られているのは、サンドイッチとアンパン、クロカン程度。飲み物は自動販売機。
でもね、昼公演は12時からですから、何か少し食べたいもの。主催者側からすると、入場前に済ませるか、終演後まで我慢してねということでしょうか。
ショットバーなどの演出であるならば立って食べることはまだしも、座る椅子もなく、ペットボトルを置くテーブルもなく、立ったままの喫食なんてありえません。とっても残念でした。
収容人数だけでこの福岡サンパレスホールを選んだのでしょうか?せっかくの演目の品格が落ちたような気分でした。入れ物って大事ですよね。
トイレの数が圧倒的に少ない
この福岡サンパレスホールの致命的な欠点は、トイレの数が圧倒的に少ないということ。開演前20分でもトイレに並ぶ観客の長蛇の列ができていました。幕間の混雑はもっとひどかったです。
まあ、係員の誘導で迅速に列は捌けてはいき、皆さん開演には間に合ったようですけれど、客席数に見合ったトイレの数とは言えません。この施設ができた昭和の時代は、数をこなすことが確かに是でした。とはいえ、今や令和。何とかなりませんかね?
ということで、今後は福岡サンパレスホールでの観劇は避けるようになるかもしれません。
ベートーベンって?
私のベートーベンについての知識は、聴覚障害のあるクラッシック音楽家で、学生時代に音楽教室に肖像画が貼ってあった記憶がある程度です。この肖像画がしかめっ面をしていたので、「気難しそうな人」という印象だけでした。
この程度の知識では、登場人物がどんな人なのかわかるわけがありません。
作品を楽しむには、時代背景や配役それぞれの関係性は理解し、概要を把握しておくことがマストです。そうすることで、物語を追うことだけに集中してしまわず、いろんな発見もできて堪能できます。しかし、私は今回まったく予習をしておらず、登場人物がわかりませんでした。そのため、作者の意図が理解できなかったのです。これが私の大きな失敗でした。
喝采 2024年1月特別号より
クンツェ&リーヴァイは、以下のような意図をもってこの作品を作ったようです。
(前略)ベートーヴェンの〈愛〉をテーマに、【父からの虐待】、【弟との確執】、【貴族からの独立】、【幻聴による強迫観念】そして【叶わぬ恋】と、様々なエピソードを織り交ぜながら、実際にベートーヴェンが残した膨大な楽曲群を紐解きつつ、メロディに歌詞をつけ、旋律を再構築し、各シーンに当てはめていくという、画期的で気の遠くなるようなアプローチを試みている。(後略)
喝采 January 2024 特別号
確かに、「月光」、「英雄」、「運命」、「田園」、「皇帝」、「エリーゼのために」、「第九」などのメロディが登場してきましたよ。壮大な音楽を背景に、出演者の絶対的歌唱力もあって感動もしました。
でもね、前述のように概要を把握していなかったからなのか、な~んか人妻との道ならぬ恋が表に出すぎるような感じがして、「なんだかね。。。」と思ってしまったのです。
ミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさん、ごめんなさい。
最後に苦言
私、花總まりさんが宝塚歌劇団の初舞台から観ています。彼女は、初舞台の次の作品で、盲目の少女「ミーミル」という、トップ娘役に次ぐ重要な役どころに大抜擢されていました。まっすぐで長い手足に小さな顔の抜群のスタイルに、黒目がちに見えるメイクの仕方など、本当に可愛らしかったことを覚えています。
その後の活躍で、伝説の娘役になったことは誰もが知ることですが、この時の舞台で、評論家から「泣き顔を研究しなさい」と指摘を受けていたことを覚えています。
年功序列が絶対的な宝塚歌劇団の世界で、初舞台を終えたばかりの新人が大抜擢をけることの大変さは想像に難くありません。一般の社会人なら新人の頃は自分のことだけやっていればなんとかなりますが、宝塚歌劇団は上級生の雑務を担わなければならず、新人は大変なようです。まあ、下級生なら出番も少ないから仕方ないのでしょうが、大抜擢を受けると、自分のことが大変なうえに雑務が乗っかるのですから、大変です。彼女は成績が良かったことで、他の同期生より負担が大きかったことも聞き及んでいます。最近の宝塚歌劇団のパワハラ報道を見ると、伝統であっても時代が変わると美徳から暴力に変わりますが、当時は美徳の時代だったのでしょう。
こんな時代も乗り越えて現在の地位を確立した花總まりさんは凄い方とはよく理解しています。ただ、今回はちょっと気になりました。
今まで花總まりさんの泣きのシーンは数多く観てきてきました。しかし、今回はあの時の評論を想い出してしまったのです。彼女が子どもを奪われて泣くシーンの表情が、ちょっといただけなかったですよね。
素人が勝手なことを言うのは簡単だし、言いっぱなしは無責任ですが、私的には残念でした。
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