関西・四国5つの美術館めぐり 2日目の2か所目は琵琶湖にほど近い場所にある佐川美術館です。
佐川急便が設立40周年の記念に、この美術館が建てられました。まるで、水の中に建てられたような建物で、館内は自然光と照明とのコントラストがきれいです。
佐川美術館の概要
- 住所:滋賀県守山市水保町北川2891
- 開館時間:9:30~17:00
- 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
常設展は3人の作家です。
- 平山郁夫 異文化とのふれあい
- 生誕110年 佐藤忠良展
- 吉左衞門X nendo×十五代吉左衞門・樂直入
このうち、吉左衛門の茶碗は、私にとって今まで見たことのない展示の仕方で、その世界に引き込まれてしまいました。
吉左衞門X nendo×十五代吉左衞門・樂直入
<HPより>
樂吉左衞門館では、開館以来「吉左衞門X」というシリーズで、十五代樂吉左衞門作品と何か(思惟を共有する作家であったり、事象であったり)とのコラボレーション展を開催してきました。第13回目となる今回は、佐藤オオキ中心に設立されたデザインオフィスnendo(ネンド)とのコラボレーション展を開催いたします。
吉左衞門X nendo×十五代吉左衞門・樂直入 | 佐川美術館 (sagawa-artmuseum.or.jp)
佐藤オオキさんは2002年、Newsweek 誌 「世界 が尊敬する日本人100」に選出され、2021年、東京オリンピック・パラリンピック の聖火台をデザインもしている方です。
吉右衛門さんと佐藤ナオキさんの才能の相乗効果で楽茶碗の世界を新たな視点で見ることができました。
Michiwan(茶碗の内部の空洞を物質化したオブジェ)
楽焼の大きな特色の一つに内部があるといいます。その茶碗の内部を3Dスキャンしたデータをもとに透明アクリルを加工したオブジェとオリジナルの茶碗と二つ並べて展示するという斬新なものでした。展示の紹介パネルには、「茶碗の内部を水で満たして、それをそのまま取り出した『みちわん』かのような見え方から 「満椀」と名付けました。」と書かれていました。
junwan – chroma(色素の分離現象によって、内在する個性を現した茶碗)
素焼き茶碗の高台周辺に万年筆用インクで線を描き、水を含ませたフェルトに茶碗をのせると、茶碗が水を吸い上げていくことで色素の分離現象がおきます。そのプロセスを動画にし、出来上がった茶碗とともに展示するという手法でした。これは、「軟質かつ多孔質な土質と肉厚な成形が樂茶碗の特徴」を表現しようとしたそうです。これは、とても面白く、「へ~、すごい!」といった感覚が生まれてきました。そして、子どもの頃の理科の実験を思い出します。
吉右衛門さんが何かとコラボレーションするという取り組みをもう13回も続けていることを考えると、これからの展示にも大変興味が沸きます。近くだったら、足しげく通うところですが、残念です。
水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~
水木しげるの生誕100周年を記念しての特別企画展が開催中でした。
この展示室がは特別展なためか、若い人が多く一番賑わっていました。
ゲゲゲの鬼太郎のテレビアニメは子供の頃見ていましたが、「妖怪は怖いもの」という認識しかありませんでした。今回、妖怪を解説する水木しげるの作品をみて、昔の人々は、日常生活のちょっと不思議な現象を人々が妖怪ととらえていた様子が、わかったような気がしました。
例えば、「つるべ落とし」とは、秋の日の急速に暮れていく様子と理解していました。しかし、「つるべ落とし」は京都府、滋賀県、岐阜県、愛知県、和歌山県などに伝わる妖怪だったのです。それも、人間を食べたりするえぐい感じです。
思わず、「ひやぁ~、知らなかった~」と言いそうになりました。
勝手に解釈すると、暗くなると事故や犯罪に巻き込まれる可能性が高くなるので、それを妖怪になぞらえているのかな?と。妖怪にはそんな役割になっているように見えるものが多数ありました。
そして、出口には、以下のような言葉が記されていました。
日本は電気が普及して、日本国中明るくなりすぎたのに加え、世の中全体が百鬼夜行の様そうになったのに怯え、本物の妖怪たちが姿をけしつつある。水木しげる
佐川美術館 水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~より
まとめ
当然のことながら、例え長く生きてきても、知らないことだらけです。見たこともないものも、いっぱいです。
そんな中で、過去に知っているつもり、見たことがあるつもりのものを、見方を変えてみることで、新たな発見があること、才能と才能がぶつかり合うと相乗効果を生むことなど、多くの刺激を受けた佐川美術館でした。